退職勧奨について

我が国における経営者側からの労働契約の終了の一つである【解雇】は法令上も実務上も非常に制限があり、できるだけこれを避けるべきだと考えている。

そのため、経営者からの相談も【穏やかに】労働契約の解消を図りたいと考えているケースも少なくありません。

企業の存続と雇用責任は経営者としての責務であり、そのため人件費の抑制や雇用の削減は、苦渋の決断にほかなりません。

このような場合、通常取られる手段が、合意による退職を勧奨する行為である。

退職勧奨は、法的には労使の合意により労働契約を終了させる合意解約の申し込みと一般的に解されている。

したがって、たとえ退職勧奨を受けても何ら強制や拘束を受けることなく自由に意思決定しうるべきであり、それに応ずる義務は一切ないはずである。

この点で、使用者の一方的意思にもとづき労働契約を終了させる解雇と全く法的性質は異なると言える。

退職勧奨自体について、解雇のような法律上の制限、すなわち法律上の解雇規制(労働基準法19条、20条)や解雇権濫用規定(労働契約法16条)の制約を受けることはない。

たとえ人員整理の目的で行われる場合であっても、判例が要求しているいわゆる整理解雇の4要件ないし要素を備える必要もないことは明白である。

なお、民法96条1項では、勧奨によってなされた解約の意思表示が使用者側の強迫によるものであれば、労働者はこれを取消すことができるとされている。

その場合は、仮に労使間で成立した合意解約であっても当然効力を失い無効となることには注意が必要である。

また、退職勧奨した上で退職しなければ解雇もあり得ると告げることの是非については通常、【強迫】には当たらないと考えられる。

その理由は、【強迫】とは暴行・監禁あるいは害を加える旨の告知、さらにこれらの行為の組合せによって人に恐怖を抱かせ、その行為を妨げることに他ならない。

企業の経営上の理由から人員整理もやむを得ないと考えられる状況下で退職勧奨が行われ、使用者が従業員の自由な意思を尊重した説得であれば、問題ない。

ただし、社会通念上許される限度を超えた手段・方法による退職勧奨は、いわゆる退職強要として違法とされるのである。

例えば、執拗で、繰り返し行われる半強制的な退職の勧めは違法となり、労働者が退職を拒否しているにもかかわらず、繰り返し長期にわたり、数人で取り囲んで勧奨するなど、労働者の自由な意思決定を妨げたということで不法行為として損害賠償が認められたケース(下関商業高校事件 最判昭55.7.10)もある。
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by kt-sr | 2013-01-29 10:34 | 労働法

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